付加価値のない自動車会

~副題 クルマだらけの間違いづくし~

今日も付加価値ゼロ、底値を目指して頑張ります

出版不況だからか、世の中が全体的に「クルマ離れ」になっているからか原因はわからないが、一般書店の自動車書籍のコーナーをパトロールしていて、新刊の数が減ったなと感じるのは気のせいだろうか。そんな中、久しぶりに自分のテイストにぴったり合った本に出会った。片岡英明監修、ベストカー編集部編集の『ざんねんなクルマ事典』(講談社ビーシー/講談社、2018年)を見つけると迷うこと無く買った。どれどれ中をじっくり見てみよう。「市場を喰ってやるぞ!」と意欲的な発想で臨んだが商業的に大失敗したクルマばかりだ。いいぞいいぞ。

思えば、こういう類いの本が好きで色々と買っている。このブログでも度々登場する『AUTOMOTIVE ATROCITIES!  THE CARS WE LOVE TO HATE』(Eric Peters、Motorbooks International、2004年)は、1970年代から1990年代にかけて発売された駄目なアメリカ車を中心に紹介した本。写真と共にポップなグラフィックと、著者のふざけまくったベシャリが斬新だった。

『乗らずに死ねないクルマ・365台(原題:365 CARS YOU MUST DRIVE) 』(Matt Stone and John Matras、スタジオ タック クリエイティブ、原版は2006年、日本語版は2008年)もめちゃくちゃ面白い。アルファベット順にカーブランドが紹介されていくのだが、世界に数台の超コレクターアイテムが出てきたかと思えば、欠陥車やキットカー、少量生産のエキゾチックカー、果てはパレードの山車みたいのから、戦車まで、もはやクルマといえないものまで登場する。軽快でユーモアのあるトークで語られているから自分にとって興味の無いクルマでも飛ばさずに読みきれてしまう。一つのブランドの全年代の中から「何でこれを選ぶかな?」というチョイスが単に名車を集めただけの本とは全く違っている。

水草一さんとテリー伊藤さんの『中古車がみるみる欲しくなる!』(ロコモーションパブリッシング、2005年)はお二人の対話形式で進んでいく内容。ネットで全国の不人気車などを検索しながら、ハズシ気味のクルマを指しては「これに乗るべきだ、あんなのに乗ってはいけない」と、前提が100%馬鹿馬鹿しいのに真面目にやっている爆笑ものの作品。ポンティアックフィエロベースの偽ケーニッヒ・テスタロッサも出てくるぞ。メーターが紙製で手書き文字なのに400万円もしたんだって。

私が知る限り、『ざんねんなクルマ事典』の前に出た同類の本は、『図説 世界の「最悪」クルマ大全(原題:The World's Worst Cars)』(Craig Cheetham著、川上完監訳、原書房、原版は2007年、日本語版は2010年)ではないだろうか。掲載している1台ごとにカラー写真がふんだんに使われ、説明する本文の他にクルマから延ばされたキャプションで具体的な駄目部分が指摘されている。自動車先進国のクルマたちだけでなく、新興国車や旧共産主義国家のモデルも結構出てくる。

この手のフォーマットは誰が考え出したのだろうか。こういう本を書く人は、駄目グルマが大好きなはずだから、愛情の眼差しを持って面白おかしくこき下ろしている。しかし、自分の好きなクルマがコケにされて面白く感じない人たちもいるようだ。本のレビューを見ていると、「事実と違う」などと批判する声も上がっている。

 案の定、私が若い時に乗っていたものと同種のシボレーカプリスも槍玉に挙げられていた。『図説 世界の「最悪」クルマ大全』の「作りが悪いにも程がある」の章に登場する。「シェヴィーの地味代表」だって。「’76~’90」と書かれていたが、正しくはモデルイヤーでいうところの’77~’90ではないだろうか。’76はフルサイズのもっとカッコいいやつだ。ああっ、これも批判になってしまう。こんなクルマでも、ローライダーの人気車種だから怒る人は出てくるかもしれない。ただし、私のは、’77~’79あたりの、リアウインドウが角張っていながらも「ラップアラウンドウインドウ(舌が...舌が)」になっているカッコいいやつではなく、オーソドックスな平面ガラスであったし、V8といえどもみんな大好き350ではなく、267の2バレルという情けないやつだった。4,400ccもあるのに115 hp(=約116.6 ps)という体たらくぶり。「博士のエンジン...」なんとかの先生が聞いたらビックリするかもしれない。

「お粗末」「安っぽい」と言われても事実なんだから反論するだけ無駄。エアコンがぶっ壊れ、いつも窓を開けて走っていたから、風のばたつきで天井の赤布の糊が剥がれしまい、四隅と中央のルームランプの場所以外は垂れ下がってしまった。うまい具合に描写できないが、宝塚の舞台カーテン。あたしは宙組?それとも月組? ちゃんと前を向いて運転しないと危ないか。

確かにシボレーカプリスの項にも記述の一部に誤りがあった。著者はイギリス人のようだ。おそらく輸入モデルを中心に書いているのかも知れない。こういう本を読んでは怒っているクルマ愛好家の人たちに「まあ、そうカッカしなさんな」と諭したいところであるが、私が乗っていたのは、タクシーの4ドアセダンと同じ顔つきの’81年「インパラ」2ドアクーペ。しかも手回しウインドウの最低トリム車。「The worst of the worst」ということになる。説得力なし。そんなことができるくらいなら、儂はドナウの流れだって変えて見せるさ。