付加価値のない自動車会

~副題 クルマだらけの間違いづくし~

やりなおしキャンピングカー

やっちまった。やっちまった。キャンピングカーを衝動買いしちまった。『カーセンサーnet』で見つけてからわずか3日目のことだった。買ったのは2012年式スバル・サンバーがベースの軽キャンパー。見た目はフツーのサンバーバンで4ナンバー登録のクルマだ。

私はサンバーのマニアではないから知識ゼロ。後日、茨城県つくば市にあるクルマとバイクのカタログ専門店「ノスタルヂ屋」さんに出かけカタログを入手した。他メーカーの軽商用バンのカタログ在庫はけっこうあるのに、サンバーのがなかなか見つからん。カタログを手放す人が少ないのか、入荷してもすぐに売れてしまうのか。サンバーの人気が窺える。2006年版のカタログが一部だけ残っていたので迷わずこれをゲット。それによるとベース車のグレードは「トランスポーター」であることがわかった。ウチのにはリアゲートから「Transporter」のステッカーが剥がされてしまっている。街中で「トランスポーター」を見かけるたびに「荷物運びに徹した最廉価版」とばかり思っていたが、実際には「Dias」を除けば最上級のグレードだった。車検証には「LE-TV1」と書かれている。「TV-2」というのもあるようだけど何の違いだ。これもカタログによって謎が解けた。「TV-1」が二駆、「TV-2」が四駆を指すらしい。なるほど勉強になった。

家には14年前のホンダのミニバンがあるから、はっきり言って2台目のクルマは不要。それでも趣味のセカンドカーとして軽自動車が欲しくてたまらなかった。きっかけは昨年6月に代車として2003年式の三菱ミニカ3ドアバンを借りたこと。3ATのクルマで本当に面白かった。それからずっと、ネットでミニカの中古車を検索する日々が続いた。ある時、スーパーの駐車場で愛車とミニカが隣り合わせになり、遠くから眺めていると「本格的な車中泊ができないようなクルマを2台も持っていてもしょうがないか」という気持ちが芽生え始めた。ミニカは大好きだけれども、どうせなら全然違うクルマ、荷室の広い軽ワンボックスにしよう。ということで次に目を付けたのはホンダ・アクティバン。こちらも基本設計が古くて3ATだ。日頃、ホンダのディーラーさんにお世話になっているから2台まとめて面倒を見てもらえるし丁度いいではないか。ところが予算コミコミ20万円くらいで考えていたのに50~60万円するから断念。ならばスズキ・エブリイはどうだ。現行型ではなくて1999年~2005年までのモデルが欲しい。フロントの顔つきとスタイリングがカッコいいではないか。軽でも商用車でもなくなってしまうがランディを見よ。あれはアメリカ車だ。

ファーストカーの車検を今年の5月に控えており2台目を買うならば1年ずらしたい。どのクルマにも言えることだが「車検残1年以上」という条件付きで検索するとタマ数はぐっと少なくなる。AT、2WD、NA、4ナンバーに限定するとなおさらだ。群馬や神奈川、果ては岐阜などに良さそうなものはあった。しかし私が住む茨城県の個体がなかなか出てこない。クルマ購入のど素人で恥ずかしいが、他県でクルマを買っても乗って帰って来れないのか。やはり陸送しなけりゃならないのか。などと考えてしまって無知が故に手が出ない。最後に選択肢に無かったスバル・サンバーも一応見ておこうという気になりネットで検索したところ冒頭のキャンピングカーに出逢ってしまった。

スバリストの方には悪いが全然カッコいいと思えなかった。唯一好きだったのは「クラシック」。しかしなんかシャレオツ過ぎて気が引ける。サンバーは4気筒エンジンで評判が高いけれども、以前に同じく4気筒を積むプレオ・ネスタ(2003年式)を所有していたが、はっきり言って私の愚鈍な操縦では3気筒車とどう違うのかフィーリングの差を全く感じ取ることができなかった。だから4気筒車だからといって買う気にはならない。

ワンボックスの軽を手に入れたら車中泊仕様にしたい。キャンプをしない(電子ジャーで炊飯すること以外に料理ができないから)私にとってキャンピングカーとしての豪華装備はまず不要。ミニギャレー(小さな流し台)とポータブルトイレだけが欲しかった。手洗いと歯磨きができればそれで十分だ。だがフツーのワンボックスバンに流し台だけ付けてくれるキャンピングカー架装メーカーはあるのか。付けてもらえるとすればいくらでやってくれるのだろうか。そんなことを思い始めた直後に見つけたのが今回のキャンピングカーである。流し台が付いているだけのシンプルな内容。求めていたものとピッタリだ。しかも茨城県内のお店にあった。価格は車両39万円、コミコミで45万円。ちょっと考えていなかった高額車だったが二度と出逢うことはないだろう。

こんなのはすぐに売れちゃうんじゃないかとダメもとで中古車屋さんに電話をしてみると、まだ残っているという。同じ県内とはいってもウチからショップまで2時間くらいかかる。今日は土曜日。着いた頃にはルームミラーに「成約済」の札がかかってたなんてことだって考えられる。そうなったら縁が無かったときっぱり諦めようではないか。店に着いた。果たしてそこにあったのは...

屋根に落雪でできた大きなヘコミがあり、またボディの数ヵ所にも小さなヘコミがあった。「外装を気にしない方に」と『カーセンサーnet』での紹介コメントに予め書かれていたが、実際の現車はとてもキレイ。こっちはカーアクション映画で育ってんだ。気にすっかそんなもの。内装は普段使いを躊躇してしまうほどのグッドコンディションだった。しかも禁煙車でラッキーなことこの上ない。

寝床は完全にフラット。天井には断熱材が貼ってありちゃんとしてるじゃないか。ルーフキャリア、プライバシーガラス、ETC、AIZU製の「マルチシェード」まで付いていて買い足すものが無い。私は使わないがナビとドライブレコーダーまで装着されていた。ボディカラーもいい。白とか銀じゃなくて水色(ライトブルー・メタリック)で最高だ。さらに歴然としたツーオーナー車だったこともプラスだった。新車時のオーナーさんは何と店主の実のお兄さん。昔からずっとキャンプが好きでお子さん達のために買ったそうだ。お子さん達が大きくなり、また一緒に出かける機会が減ってしまって手放したという。次の嫁ぎ先はショップの近所に住むご年配の方。定年退職後に夫婦で温泉巡りをするために購入されたのだが、結局近所のスーパー銭湯に通っただけでベッド部分は一度も使用されなかったと伺った。他に2台のクルマを所有されているお宅で、3台目をもて余して出戻ってきた。まだ6万キロしか走っておらず、きちんと整備されてきた極上の個体だ。

フロントパネルには「Canbe」の文字が、リヤゲートの上の方には「AUSTRA」と書かれている。「アウストラ」がキャンピングカービルダーの名前なのか。初めて聞くメーカーだ。ネットで調べてみたら東京都目黒区の会社らしい。昔買った『軽キャンパーfan』(八重洲出版)を幾つか見ていたら2010年のvol. 6に私が買ったのと同型車がちゃんと掲載されていた。これによると、私の個体には「スイングダウンベッド」という子供用の吊り下げベッドが装備され、サブバッテリーも1個増設されていた。

このムック本を買った当時「バンコン(=バンコンバージョン)」は検討外だったからノーマークだった。同社のホームページを見てみると「100万円キャンピングカー」を売りとしている。ローコストに徹するために宣伝は行わないという方針であった。どおりでキャンピングカー雑誌や軽キャンパーの特集本を見ても広告が出ていないから気が付かなかったわけだ。キャンピングカーメーカーは複数の車種をラインナップするのが一般的だが、同社は一車種のみの展開。

私が買ったサンバーベースの車両はアウストラ社初のモデルだった。2012年にサンバーの販売が終了すると第二号車は三菱ミニキャブ/日産クリッパーベースに切り替わった。現在はスズキ・エブリイを架装した「Canbe 3」が売られている。100万円とはいかないが変わらずローコストを追求していて最もベーシックな仕様は148.9万円(店頭渡し乗出価格)から買うことができる。

軽とはいっても、いかにもキャンピングカーといった雰囲気を持つ「キャブコン(=キャブコンバージョン)」車を買おうとすれば230~250万円くらいするものだ。10年以上前でもそれくらいの値段だった。バン然とした見かけにはなってしまうが、そこに100万円強で買えるとなれば、家計への負担も軽くセカンドカーとしても十分に検討対象となるであろう。作り手も買い手もデラックス志向が強いキャンピングカー界にあってアウストラは貴重な存在だ。もっと多くの人に知って欲しい、頑張って欲しいビルダーである。

しかしよくもまあこんないい出物が売れ残っていたものだ。ショップの社長さんによれば『カーセンサーnet』に掲載されてから3週目くらいだったそう。見に来る人はかなりいたけれど、もう欲しくてたまらない夢心地の旦那さんをよそに奥さんが首を縦に振らなかったらしい。その点、我が家は過去に一度キャンピングカーライフを経験しているから、月々少額払いのローンを条件にすんなりと許してくれた。夫婦の間では、子供達が巣立ったらまたいつか小さなキャンピングカーを買おうと話していた。それは10年後くらいにやってくるかも知れない予定だった。中古の軽トラを手に入れ荷台に簡素なシェルを載せた「トラキャン(=トラックキャンパー)」で温泉巡り(と騙しつつ本当は全国のミニサーキット巡り)ができたらいい。けれどもそれを実現しようとすれば安くあげても150万円くらいかかるだろう。シニアになるまでに150万円を貯めなければならない。「絶望」の文字が立ちはだかる。それが今回45万円で手に入ってしまった。軽キャンパーは値落ちしないから、普通キャンピングカーの専門店だったら80万円とか100万円とかしているはずだ。私は感動し興奮し気づけば事務所の中に。そういえば値段交渉し忘れた。もう手遅れか。

 以前のブログで書いたことだが、10年ほど前にキャンピングカーを持っていた。それは1994年式シボレーG20バンがベースのカナダ製キャンピングカー「ロードトレック」だった。北米のモーターホームのミニバージョンで電子レンジ、冷蔵庫はもちろんトイレも付いていた。発電機とルーフエアコン完備だから真夏の旅行でも快適だった。ずっと乗っていたかったのだが、ある時期、接客業に転職したら土・日が休みとは限らず子供達を乗せて出かける機会がめっきりと減ってしまった。痛まないように無理矢理近所を走ってた感じだ。そんなワケでロードトレックを泣く泣く手放した。(本当はカネです)

今度のキャンビーとは一生ものとして付き合っていこう。2台のクルマの維持ができなくなったら、こっちをファーストカーにする。壊さないようにいたわりながら、小まめにメンテナンスをしてもらいながら乗り続けていきたい。「サンバー 乗り方」「持病」「注意点」などのキーワードでサンバーちゃんを学ぶ毎日。よっしゃ夢のとびらをこじ開けたぞ!

夢と引き換えになったのは鬼のような長期ローン。返済したのはたったの1回。マイジャーニーの道しるべには"Road to Hell"って書いてあるようにも見える。