付加価値のない自動車会

~副題 クルマだらけの間違いづくし~

事実は口コミより真なり 茨城県筑西の中古車屋さん 結城自動車

先日スバルサンバーベースの軽キャンパー、アウストラ社の「キャンビー」を買ったのは茨城県筑西市にある中古車販売店の結城自動車さん。

いくらお目当てのクルマがたった一台そこにしかなかったとしても、やはり販売店の対応は気になる。どんなにクルマが素晴らしくてもお店が悪ければ私は絶対に買わない。キャンビーを見つけた時、『カーセンサーnet』の「クチコミ」を当然参考にした。「接客」は5段階中「5」で最上位、「雰囲気」「アフター」「品質」も極めて「5」に近い数字で評判は良さそうだ。だがそんなに悪評価の店がたくさんあるわけではないから、やはり直接訪れてみないことには本当に良い店なのかわからない。

「少人数体制の為、ご連絡後のご来店をお願い致します。」と書かれていた。地元を出発する前に売れ残っているのかの確認も兼ねて電話をしてみた。すると電話の向こうからいかにも誠実で親切そうな声が聞こえてきた。クチコミどおりなんか良さそうな店だということがわかり安心してクルマを走らせた。店に近付くと街道沿いからざっと数えて5~6台のクルマが見えてきた。「小さな店」と事前に聞いてはいたが確かにそれほど大きくない。地面に少し凹凸のある砂利敷きの店だった。

早速クルマを見せていただく。写真や紹介コメントから想像していたよりも現車はずっとコンディションが良かった。誇大広告の真逆。屋根に大きなヘコミがあり写真では目立っていたが、前方からはほとんど気付かれない。社長兼店主の木下さんはディーラーの塗装部門で修行された経験を持つ板金塗装のプロフェッショナルの方。ヘコミを直すことはできるのだが、室内の天井に断熱材が入れられており、それを外してから叩き出すとえらくコストがかかってしまうらしい。当然それは販売価格に転嫁されてしまい、お買い得感が失われてしまうからやめることにしたそうである。妻が「事故車ではないのか」と疑うので改めてヘコミの原因について訊いてみた。10年くらい前に関東を襲った大雪の時、当時のオーナー(社長さんの実兄)の自宅の屋根に積もった雪が屋根を直撃したそうだ。信憑性のあるエピソードだったのでそれ以上追及する必要はなかった。塗装のプロの目から見ても剥離が起きそうにないというから安心した。

機関も良好。試乗こそできなかったがエンジンと補記類からの異音は無し。エアコンからの空気も無臭だった。ATのつながりも良いとのこと。「但し...」ということで、サンバーのエンジンの泣きどころについて説明をしてくれた。エンジンオイルの滲みや漏れがどの個体でも発生し得るという。エンジンをリアに傾斜させて積むサンバー特有の病気で仕方のないことだそうだ。また普通に走っていても高回転域を多用するエンジン(特に3AT車)であることから3,000キロ毎を目安にエンジンオイルを交換するよう推奨された。オイル減りや滲みを早期に発見することで大きなトラブルを未然に防げるという。高い頻度でオイル交換をして欲しいという店側の想いからオイル交換の料金はかなりリーズナブルに設定されている。

創業当時は軽トラや軽商用バンを中心に展開していたと話されていた。その後は乗用車をメインに販売されている。昔は仕入れたクルマにトラブルが起きるなど色々と失敗もしてきたと伺った。様々なメーカー、車種を扱ってきた実績から各車の弱点を包み隠さず教えてくれる。少し古めのクルマを検討している客にはトラブルのリスクを説明した上で購入してもらっているそうだ。

クルマを買う際、数車種の間で迷ったら結城自動車さんに相談してみたらよいだろう。車種毎の良いところ悪いところも知らずにアレコレ検討しても仕方がない。早期に欲しいものが絞り込めると思う。特に少し古くても安く手に入れたい人は対象のものが良いクルマか故障が起こりやすいクルマか経験の上で話してくれるし、それでも乗りたいということであれば予防的な整備(当然、別途費用がかかります)や定期メンテナンスのアドバイスをしてくれる。私はサンバーを買ってしまった後なので何の意味もないが、過去に検討していたクルマの名前を挙げるとそれぞれのトラブルスポットを教えてくれた。それを聞いた時、「あー○○を買わないでヨカッタ」と胸を撫で下ろした。

ディーラーさんの「カーライフアドバイザー」よりもまず、モノとしてこれはどうなのかを教えてくれる「カーアドバイザー」が買う側には必要だ。その点で結城自動車さんは心強い味方になってくれるだろう。

 

私が初めて店を訪れたのは2月の初旬、納車は2週間後だった。ちょうど世の中的には新生活を迎える時期と重なっていたこともあってかクルマが飛ぶように売れていた。いつ訪れても店頭には常に納車待ちのクルマが3台くらい停まっていて、個人で営んでいる小さな店らしからぬ売れ行きに驚いてしまった。『カーセンサーnet』 に掲載されていないクルマもたくさんあるから気になって訊ねてみると、客の要望を聞いてオークションで仕入れてくるそうだ。そういえばお店のタイトルは「車のお探し専門店 結城自動車」だった。

このお店では「車探し」と「在庫車」とを完全に切り離して考えていて「オークションで探して欲しい」という客に代替案として在庫車を無理に奨めることは決してない。「当社が選ばれる {5つの理由}」の中に「しつこい売り込みがなく、気軽に来店できる安心感から選ばれています!」とあるとおり、押し売りをしないのがこのお店のもう一つの美点である。

他方、在庫車はどうなっているかというと、こちらもオークションなのだが社長さんが面白いと思ったクルマを仕入れてくる。だからけっこうな数のマニュアル車も売りに出されている。しかもそれらは、いかにもチューニングカーやスポーツカーというのではなく、どノーマルでフツーのハッチバックやセダンの5MT車などである。

少し前までは「ミラジーノ専門店」的な商いをされていた。ミラジーノに関してはご本人曰く「飽きるほど整備してきた」と語るほどの実績があるのでネオクラシックのジーノをお探しの人にもオススメだ。こんな風に書くとマニアックなお店を想像されてしまうので少し訂正。実際には万人受けする売れ筋車種(しかも完全ノーマル)を多く取り揃えているからご心配なく。

在庫車の中心は1990年代後半から2010年代前半までの車種。走行距離10万キロ以上のクルマも珍しくない。「タイミングベルト交換済み」と必ずしも謳っているわけではないが、機関のコンディションに特別注意を払っているお店なのでタイミングベルトも交換しているようだ。早めに交換した方が良い車種に対しては10万キロを待たずに交換してしまうと話されていた。タイミングチェーンのクルマもあるので購入する際にはお店側に確認してみよう。10万キロを超えたクルマであっても整備歴が明らかで機関的に手入れの行き届いたクルマしか仕入れていない。展示車両に限れば、だいたいコミコミ25~50万円くらいの価格で安心して新しいカーライフをスタートさせることができる。

 

店頭在庫はいつも15台ほど。4月に入り少し落ち着いたが、3月末までは毎日1台づつ掲出車両が「SOLD OUT」に切り替わり、私の印象では1ヵ月で在庫車が一巡してしまうような感じを受けた。中古車でこんな在庫回転率があるものなのか。どうしてこんなにも売れるのか不思議でならなかったので伺うと、初めは『カーセンサーnet』などを見て訪れ、購入した客がリピーターになってしまうらしい。クルマを買い替える時や、家族がクルマを買う時にリピートでやって来る。

この人気の秘訣はどこにあるのか。社長さんの親身で丁寧な対応はもちろん大きな理由のひとつ。「クチコミ」を読めば目利きの良さも伝わって来る。しかしそれに加えて客の心をつかむ工夫も色々とされている。例えば、納車記念にケーキをプレゼントしてもらえる。納車時にはクーラーボックスを持っていこう。どんなタイプのケーキかは購入した人のお楽しみのために言わないでおく。また顧客フォローもきちんと行っている。そのやり方も独特なのでこれも内緒。クソ忙しいのになんてマメな人なんだろうと関心してしまった。こりゃリピーターになるわな。

こうして私も一見さんから結城自動車ファンのひとりになってしまった。こっちの勝手だが店とのお付き合いが始まった。そして、先日ファーストカーの車検をお願いした。車検整備のポリシーが独特で面白かったからだ。「安全を犠牲にせず、高品質を保ちながら低価格化を目指しており、必要な時間をきちんと確保するために1日1台限定」といった主旨のことが案内に書かれていた。

ここ30年、お付き合いのある個人経営のクルマ屋さんがなかったから、新車で購入して以来ほぼ全ての整備をホンダのディーラーさんにお願いしてきた。今回7回目の車検を迎え、初めてディーラーさん以外のお店に出した。買ったクルマでもないのにやってくれるのか恐る恐る訊ねてみると快く引き受けてくれた。2年前にかなりの額を投じ、しっかりと整備を行っていたという経緯があったことは確かだが、車検整備と数々の消耗パーツを交換してくれた上で10万円に満たず、私にとってはかなりリーズナブルな費用で済んだのでとても満足である。

社長さんは大のクルマ好き。今は忙し過ぎてできなくなってしまうと言うが、以前は趣味でクルマのオールペンをしたり、バイクに乗ったり(現在も所有)していたと教えてくれた。いつも訪れる度に「忙しいのに悪いなぁ」と思いつつ私がくだらんクルマ話を始めると辛抱強く付き合ってくれる。なんだか久々にクルマ談義をする友達ができたような感覚になり、こっちは幸せだが、向こうにとっては迷惑な話だろう。

茨城県筑西市にある結城自動車さんは私が自信をもってオススメしたい中古車店だ。私もクルマの買い換え時が訪れたら、またお世話になりたいし、息子達がクルマを持つ年頃になったら連れていくつもりだ。「いいから親の言うことを聞いてミラバンの3ドア車5速マニュアルにしなさい!」などと父親の私の方が押し売りモンスターになりそうでこわー。