付加価値のない自動車会

~副題 クルマだらけの間違いづくし~

やりなおしキャンピングカー(聞き手はいない報告義務はない。進捗)

ここは茨城県筑西市の結城自動車さん。スバル・サンバーがベースのキャンピングカー、「アウストラ・キャンビー」はめでたく納車の日を迎えた。社長さんが見送ってくれる中、下の息子(ヘンな意味じゃないよ)を助手席に乗せ店を後にした。

数百メートル走ったところで息子と私は顔を見合わせて大声で笑ってしまった。キャブオーバースタイルのクルマだからフロントガラスの真下に路面が迫り新鮮だ。なんだかガラス窓が走ってゆくみたい。それにしてもすごい振動と揺れようである。路面の継ぎ目や凹凸をいちいち真面目に拾い上げゴツゴツと下から突き上げてくる。これにはビックリ。商用車に乗ったことがないわけではないが、軽トラや軽商用バンの乗り味というのはこういうものだったのか。

足元には剥き出しのステアリングシャフト。ビニール傘の先端のようなか細さでなんとも頼りない。まるでペダルカーのようだ。見えないだけで、どの軽自動車もこんなものなのか。左足ブレーキができない。シャフトが邪魔してる。

私のサンバーはNAの3ATである。早々とサードに入ったらもうそれで終わり。だから、なんだか常にサイドブレーキを引き摺りながら走っているというか、エンブレが利いているというか、奇妙な感覚に陥る。いつも「あれっ、おかしいな4速にシフトアップしないぞ」と勘違い。3ATなんだからあたりまえだろ。もう1段上にあるような気がしてならないが、そんなわけはない。

キャンピングカー雑誌には、軽トラベースの「キャブコン(=キャブコンバージョン)」タイプのオーナー手記が載っている。「非力で上り坂がつらい」という声をよく耳にする。私のはあまり架装していないバンタイプであるにもかかわらず、これまた遅い。ただし、高速道路や4車線化されている幹線道路を巡航している分には多少の上り坂が来てもあまり問題はない。困るのは傾斜のきつい山道なんかでの話である。それでも県道を走っていて後ろに乗用車がついた時には気を遣う。上り坂が見えると、手前の平地や下り坂で勢いを付けてから上り坂に入るようにしている。坂が続く。だんだんと時速50kmを維持するのが厳しくなってくる。そんな時はエンジンがかわいそうだけどキックダウンするしかない。しかし高回転音に変わるだけで一向に加速しない。だから急いでそうなクルマやバイクが後ろに来たら道を譲り先に行ってもらうことにしている。

高速道路もずいぶんと走った。エンジンの回転を上げないように左車線限定でのんびりとゆく。大きなサービスエリアが近付くと左のSA進入車線からもびゅんびゅん抜いていきやがる。後続車がいなければ75km/h程度に抑え、トラックが近付いてくると迷惑にならないよう一瞬だけ90km/hまで上げ、追い越してもらったらまた75km/hに戻す。その繰り返し。赤帽のサンバートラックや「Dias」と思わしきサンバーがスイスイと私の右横を過ぎ去ってゆく。「きっとスーパーチャージャー付きかな」「5速車かな」などと想像しながら自分はマイペース。いつも普通車で走っている道のりが遠く感じる。まだこんなところかと。一般道ではリッター14kmくらいの燃費が高速だと12km台に落ち込んでしまった。フツーとは逆である。だがそれでも軽自動車の高速料金はおトクだし、のろまでも旅した気分をより味わうことができるのはこちらの方だ。

こんな「動くシケイン」みたいなことばかりだと、こちらも鬱憤が溜まる。ストレスの捌け口を探しに下道へ。一般道で「KATO」や「TADANO」なんかのロゴを見つけては、シグナルグランプリをしかけ自走式クレーン車を置き去りにしてくれよう。1台ちぎるごとにボディに☆のマークを刻んでやりたいが、歳は間もなく50代の半ば。子供じゃないんだと自分に言い聞かせ、ここはおとなしくキキララのシールを手帳に貼るだけにしておく。

 

私のはキャンプ用キャンピングカーではない。「サーキットに草レースを観に行く用」キャンピングカーなのである。コロナのこともあるから、まだ車中泊するほどの遠出はしていない。先日、ツインリンクもてぎで開催された「もてぎチャンピオンカップレース」の第2戦を観に行ってきた。ここは自宅から下道で30分とかからない。これはこれで相当幸せな話だ。ずっと昔に「インディジャパン300」を観戦した時、コースサイドをキャンピングカーで陣取るリッチな人達を見て羨ましく思った。オーバルレースは開催されなくなってしまったけれども、いまだに「ロードコース コースサイドキャンプ駐車券」という名前でキャンピングカーサイトの提供をしていて、「全日本ロードレース」や「SUPER GT」などのビッグレースになると土・日を通してコース脇にクルマを駐めてレースを観戦することができる。私が出かけるのは「観戦はご自由に」という地方選手権だから、一名ならば入場料大人1,200円と駐車料金1,000円の計2,200円を払うだけで一日中レースを楽しめる。レース参加者の身内しか観てなさそうな感じで、どの観客席も人はまばらである。当然、コースサイドキャンピングカーサイトもガラ空きだった。私は「S字カーブ」から「V字コーナー」を見渡せるフラットな高台に陣取ることができた。

ダウンヒルストレート」の脇の土手にも駐められるが、けっこうな勾配のある坂の途中なのでひょっとしたら駐停車禁止場所かも知れないし、クルマの姿勢が悪いので降りないとちょっと見づらいかも。近くにトイレと駐車場があるのでそちらに駐めて観戦することをおすすめする。

別にどんなクルマでも実現できることだが、キャンピングカーサイトにキャンピングカーで乗り付けてレースを観る。これは格別の気分だ。総費用45万円の月賦払いだとしてもだ。レースとレースとの間の準備時間に社内でうたた寝ができるし、食料と飲み物を積んで、ちょっとしたピクニック気取りが楽しめる。レース終盤、夕立に遭った。しかし雨降る中でも車内にいながら最終レースまでしっかりと観ることができた。

次は「もてぎロードレース選手権」でも観に来るか。せっかくのキャンピングカーなのだから、いつかコロナ禍が落ち着いたらサービスエリアや道の駅で前泊しながら少し羽根を伸ばして、埼玉県の本庄サーキット(GOLDEX本庄モーターパーク)、栃木県の丸和オートランド那須や日光サーキット、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイ茂原ツインサーキットなどにも出かけてみたいと思う。

 

私は幼少の頃からアメリカ車のファン。しかもスポーティーな車種ではなくフルサイズクーペやフルサイズセダンに憧れた口。排気量がデカけりゃデカいほどいいというわけではないが、大きなエンジンのクルマを低い回転数でゆったりと転がすのが好きだ。高速道路を90km/h~100km/h、2,000rpm以下でクルーズさせるのが私にとっての快感。フワフワなサスと長いホイールベースがあると嬉しい。

今はアメリカ車を維持する経済力がないから、代わりに国産車ホイールベースが長めのクルマにはどういうものがあるんだろうとインターネットで調べていたら、「greeco channel」というデータベースサイトを見つけた。「ホイールベースが大きい国産車・日本車ランキング」というページに約1,000件、10件表示で110ページ分も掲載されていた。しばらく見た後で最もホイールベースが短い車種を調べてみようと最終ページにジャンプしてみたら、なんとサンバーと同じ1,885mmのスバル・ドミンゴ(FA8)がケツから2番目に入っていた。おお、2mを切っていたのか。それを知って改めて真横からサンバーを眺めてみると本当に短い。トロッコみたいだ。

このデータベースには100km/h巡航時にエンジン回転数が低いクルマ順のランキングもあった。国産車すべてを含めると3,000件を超えてしまうので軽自動車だけを調べてみた。「時速100kmの回転数が低い 軽自動車ランキング [軽・全車種]」の中でも最終ページを飾るのはサンバーであった。

「ロングホイールベース」と「高速道路での低回転」という基準からクルマを選択したい私にとってサンバーは最も遠い存在。キャンピングカーでなければ買うことはなかっただろう。そのキャンピングカーにしても知らない人から見ればただの小口配送車か貧乏くさい車中泊用のクルマに映るだろう。それでは買ったことを後悔しているかと訊かれれば、全くその逆で最高に満足している。

今はサンバーが可愛くてしかたがない。週末用として購入したけれども、仕事が早く終わった日にはわざわざサンバーに乗り換えてから市営の温泉施設に出かけているほどである。いつでも気兼ねなくさっと乗り出せるキャンピングカーこそまさに私が求めていたものだった。こりゃかなりいいぞ。

途中の坂道。後続車につかれると「サンバーちゃんがんばれー!」「逃げろサンバーちゃん!」などと声を上げてエールを送る。薄毛ではないがだいぶ白髪に覆われた中年がクルマに話しかけてる。かなりきちゃってる感じで危ないが、サンバーに乗るおっさんは全国的にそんな風だと思うの。