付加価値のない自動車会

~副題 クルマだらけの間違いづくし~

リンゴの皮剥きひとつできないやつのキャンピングカー購入ガイド

いつも本や映画の紹介ばかりでは、他人の褌で相撲を取っている奴だと言われかねない。いや相撲も取っていない。行司です。他人の褌を穿いて(穿くタイプのものがあるわけじゃないが)洗って返します。それはさておき、今日は一人称で自分の意見を述べないといけないから大変だ。こういう時は経験談でいこう。

以前、私はキャンピングカーを持っていた。後述するが、わけあって惜しくも手放すことになってしまった。飽きたわけでも興味を失ったわけでもないから、できればずっと手元に置いておきたかった。今考えると、どんな事情があろうとも乗り続けていけるキャンピングカーを選んでおけばよかったのかも知れない。そんな失敗を踏まえて、これからキャンピングカーを購入しようと考えている人の手助けをしたい。

しかし、私の場合、購入動機がかなりヘンだ。土・日にお掃除や洗濯、ちょっとした家の修繕のようなことをやっていると、家を出るのが午後2時、3時となる。それでいて近場で楽しめる人間であればよかったのだが、都心に住んでいながら渋滞と混雑が大嫌いだから、30km以上離れた郊外まで足を伸ばさないと休んだ気がしない。遊園地に着いた頃には閉園1時間前。「ネズチューランド」だったら夜の9時、10時に花火が上がる。しかし、こちらは混雑しない場末の遊園地専門だから、遅くとも5時半には券売機にカバーがかかってしまう。おいおい、子供がいるのにバッテリーカー片付けんのかよ。日曜日こそ早起きして10時に出掛けようと意気込んでも、結局昼過ぎになることもしばしば。キャンピングカーを買う以前は、土曜日の夕方までに家事を終わらせ、6時頃に場末の遊園地を目指して出発。その夜は近隣のホテルに一家四人で泊まることも多かった。ホテルと言っても「○○観光ホテル 虹の架け橋」のような浮き世を忘れるところではない。便器とユニットバス激近のノーアメニティビジネスホテルのことである。こうすることでようやく家族は1日フリーパス券で遊ぶ楽しさを噛み締めることができたのであった。前日の夜に現地入りがしたい。これがキャンピングカーが欲しくなった一番の理由である。

車種の選択ポイントもエキセントリック。4人家族分全席3点式シートベルトが条件。現在は法律の改正によりこれが義務付けられているが、当時は後席2点式が一般的だった。購入に踏み切るまでに5年も悩んだ。最初はずっと軽キャンパーを検討していた。新車で欲しい装備を加えると、どうやっても乗り出し価格は240万円くらいの計算になった。乗っているクルマにヒッチメンバーを付けてもらい、軽のトレーラーも考えたが、これも総額はやはり240万円くらいとなり二の足を踏んだ。

キャンピングカー専門店のホームページで中古車検索が続く。1994年と、ちょっと古かったが値段のこなれたキャンピングカーが現れた。写真から4座席分純正の3点式シートベルトが確認できた。シェビーバンG20がベースの架装キャンパー、カナダの「ロードトレック・ダズラー(ズラじゃねえぞ)」だった。ショップに足を運び、エンジンをかけてもらったところ一発始動。補記類含めて異音が全く聞こえて来ない。ナンバーが付いていて近所の公道を試乗させてもらったところ、エンジンもミッションも異常なし。足回りもブレーキも良好であったためこれに決めた。アメ車のくせにちゃんと真っ直ぐ走ったので拍子抜けした。

イントロ長過ぎだぞ。じゃあここから本題。元々キャンプが好きで、どんなクルマだろうとキャンプ場に行ってテント張ってたような人は、どれを買っても正解。高かろうが大きかろうが、使い倒してずーっと乗り続けるだろうから、好きなものを買っても大丈夫。私の義理のお兄さんがこのタイプ。そもそも自転車にテントと寝袋だけ積んで空き地で寝てたし、Colemanなど一つも持っていない時からオートキャンプ場に行っていた。日本フォードのスペクトロンというレアものに不要おコタを積んでテーブルの代わりにしていたり、ランタンが無いから本物のローソクを立てて、そのブースだけ八つ墓村みたいになっていたそうだ。その義兄は「クラスC」というカテゴリーのアメリカ製モーターホームを中古で買った。アメリカ映画やフリーウェイの風景の映像に登場するかなり大きなキャンピングカー。ベースはフォードのE350やE450など。子供たちが皆大きくなってしまい出動回数はかなり減ってしまったが、今でも所有し続けている。

目的地がスキー場や、規模が大きくて良く整備されたオートキャンプ場、高速のSA/PA、大きな道の駅などが中心であれば、居住空間が広い大型のキャンピングカーが相応しいだろう。

反対に私のようなキャンプを全然しない人は何を買うべきか。私は迷わずにできる限り小さいものを推奨する。使用実態としては殆んど車中泊車と変わらない。しかし、キャンピングカーの装備はやはり便利だ。キャンピングカー雑誌は定期的に「トイレは必要か必要ではないか」という特集を組んでいる。これはあると便利だ。特に小さな子供がいる家庭には絶対にあった方が良い。朝起きたばかりの時、あなたは寝癖と目糞だらけの顔でサービスエリアに降り立つ勇気はありますか。相当な悪天候な時、防犯上、外に出るのは気が引ける時などにも重宝するので欲しいアイテムだ。きれいなトイレが見つからない場所で、子供がうんちだ、おしっこだと騒いでも慌てる必要なし。ポータブルトイレは1~2万円でもちゃんとしたものが買える。家で処理したり洗えるからポータブルが良い。

どんなに小さくてもギャレー(流し台)が欲しいところである。小さな子供がクルマのなかで手洗いや歯磨きができるし、ちょっとした拭き掃除の時に水が使えるのはありがたい。普通、電気モーターでポンプを動かし蛇口をひねれば水が出てくる仕組みになっている。しかし、スポーツで使われているような自然落下式のウォータージャグでも十分だろう。

調理をしないのであれば、無理にカセットコンロや冷蔵庫を装備する必要はない。また、オーニングと呼ばれる日除けがボディサイドに付いているとキャンピングカーらしくてカッコいいのだが、道の駅やSA/PAで使うことはマナー違反とされているので、キャンプ場を使わない人にとっては使い途がない。

高速道路から離れ一般道を使って隠れた名所や温泉などを巡る場合、驚くほど道が狭くなることがあるから、小さなクルマの方が圧倒的に有利だ。旅先の買い出し時にショッピングモールなどを訪れた時にも駐車場に困らない。但し、いく先々で月の輪熊の木彫りやたぬきの信楽焼、貝殻でできたふくろうなどの土産物を買ったりすると、直ぐに車内は荷物だらけになってしまう。着替えた後の洗濯物、ごみ袋も増えていく。ポップアップルーフやエレベータールーフのクルマでは難しいが、標準の屋根のクルマならばルーフボックスを付けて不要なものを車内から出してしまおう。お金に余裕のある人はリアゲートにラダー(梯子)を付けて、さらにプラスチック製のキャンピングカー用ゴミ箱を取り付けることもできるので車内は居住空間として広く使えるようになる。

「いつ買うの?」「そこに山があるから」などと噛み合わないことを言っている場合ではない。小さなお子さんのいるヤングファミリーには出来るだけ早く買って欲しい。子育てを経験した人ならばご存知のとおり、子供が中学生以上になると一家で揃って出掛ける機会が劇的に減ってしまう。部活やクラブチームに入ってたりすると尚更だ。第一子目のお子さんが中学に入る前までにどれだけキャンピングカーとの思い出を作ってあげられるかが勝負である。無理する価値はあると思う。そんな時に、ファーストカーとして日常乗れるサイズのキャンパーが良い。

私は一時期、サービス業界に転職して土・日が勤務日となり、子供の休みと合わなくなってしまった。纏まった休みがないと、キャンピングカーに乗って出掛けることが億劫になり、あまり動かさなくなってしまった。置きっぱなしだとクルマが傷むので、わざわざエンジンだけかけたり、動かす目的だけのために近所のホームセンターに乗って出掛けていたが、これにも限界がありやむ無く手放さざるを得なくなった。

そうこうしている間に子供たちは大きくなり、長男は親と出掛けなくなり、次男も友達と遊ぶ日が増えてきた。このようにライフステージが変わってしまっても、無理なく維持できるキャンピングカーとなると、できるだけ小さくあるべきなのである。軽とは限らないが、日常使いができるキャンパーを選んでいれば一生ものとして乗り続けていることができたのであろうか。

どんなに小さくても、どんなに簡素でも、キャンピングカーは夢の中の秘密基地であり、ロマンだ。相棒は一冊の文庫本とフォークギター。キミも俺と一緒に旅に出ないか?